一般社団法人 最適経営学践協会 監事の磯部和良(いそべ かずよし)です。
ファイナンシャル・プランナー、生命保険の専門家として、元証券マンの経験を活かしながら情報提供していきますね。
第一回は「ちょっと待ってください、その保険の解約!」です。
法人保険の相談を受けていると、よく伺うのが「法人保険の解約」です。
会社を経営していると予定外に突然苦しくなることもあると思います。
・リーマンショックや海外の金融危機のとき
・大きな自然災害のとき など
解約理由は明確で、
・まとまったお金が必要になった
・会社で契約をしている法人保険の保険料が負担になった
・赤字が出そうになったりして、保険料を払うと赤字がさらに大きくなってしまう
すぐに思い浮かぶのが「解約」だと思いますが、
解約をしなくても保険を続けていける方法もあります。
もちろん「解約したほうがいい場合もあります」が、
苦しい時ほどメリットとデメリットを見極め、冷静に対処する必要があります。
本日は、法人保険の保険料の支払いがきつくなり解約を考えた時の対処法を、
5つお伝えします。ぜひ参考にしてください。
① 払済(はらいずみ) それまで支払った保険料の分の保障を残す
解約はせず、保険料の払込をストップして以後はその時点の解約返戻金に応じて保障を受けるという方法です。
ただし、払済にすると、その時点で、解約返戻金を受け取った場合と同じように、損金タイプに応じて、以下のように雑収入(益金)が計上されます。
・全額損金:解約返戻金全額
・1/2損金:解約返戻金額-年払保険料×(1-1/2)×加入年数
・1/3損金:解約返戻金額-年払保険料×(1-1/3)×加入年数
したがって、解約返戻金を受け取ることなく益金が計上され、赤字がカバーできます。
払済のメリットは、保険料の払込をストップした後も解約返戻金の返戻率が上がっていくことです。
返戻率の上昇の幅は保険会社にもより大きく違いますが、長く置いておけばその分返戻率が上がっていきます。
赤字の幅は大きいがキャッシュはあるというのであれば、払済は有効な方法です。
② 保険金を減額して保険料を下げる
解約返戻金の返戻率が高いタイミングで、赤字が比較的小幅で、保険を全部解約するまでもないのであれば、保険金額を減額して保険料を下げる方法があります。
もちろん保障額は下がりますが、その分、会社の保険料の負担を軽減することができます。
そして、減額した部分については「一部解約」ということになりますので、その分だけ、その時の返戻率に応じた解約返戻金が受け取れます。
例えば、保障額が1億円の保険に加入していて、現時点で1,000万円の解約返戻金があったとします。
この保障額を1億円から5,000万円に下げると、下げた半分が部分解約されたことになるため、500万円の解約返戻金を受け取れます。
③ 保険料の契約者貸付制度を利用してお金を借りる
保険会社からお金を借りることができるのが「契約者貸付制度」です。
契約者貸付制度の場合、保険会社や商品にもよりますが解約返戻金の80%~90%を上限として借りることができます。
利息は、保険会社によって違いはありますが、2.75%~3%ほどとなっています。
なお、この「契約者貸付制度」は、保険料を支払うキャッシュが足りない場合以外にも、活用法があります。
それは、たとえば、急にビジネスチャンスが訪れたのに当座のキャッシュがない場合です。
こういう場合、銀行から融資を受けようとしても、審査等に時間がかりますし、担保を要求されることもあります。
そこで、「契約者貸付制度」を活用すれば、担保を立てる必要はないし、面倒な審査もなく、申請から1 週間程度で受け取れます。これによって、急なまとまった額の出費に対応することができるのです。
④ 自動振替貸付制度を利用して保険料を払わず継続する
法人保険には「自動振替貸付」の特約が付いていることがあります。
これは、保険料を支払わなかった時に自動的に「契約者貸付」がされ、同時に、保険料が支払われたことになるものです。
契約者貸付の額の上限は、その時の解約返戻金の額です。つまり、保険料の支払いをせず放置すれば、その時の解約返戻金の額から、自動的に保険料に充てられていくのです。
自動振替貸付の特約は、保険料の「支払猶予期間」の2ヶ月間を過ぎても保険料の支払いがされない場合に発動します。もちろん、契約者貸付ですので、年2.75~3.0%の利息が発生します。
⑤ 変換制度を活用して保険料を下げて保障は継続する
経営者であるあなたに万一のことがあった場合に備え、会社に最低限の保障はキープしておきたい場合に活用したいのが変換制度です。
変換すると、解約しないまま解約返戻金を受け取り、保険金額を下げずに掛け捨ての保険に変更することができます。
この「変換」の一番のポイントは、「健康状態の告知」がいらないことです。もしも健康状態が悪く、本来保険に加入できない状態だったとしても、「変換」であれば、保障は継続できます。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
この他にも状況に応じて気をつけなければいけない点もありますので、お気軽にお問い合わせください。
磯部 和良